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最近のアルジェリア治安情勢
(米国同時多発テロ事件を含む情勢の変化と右への対応)

平成14年1月13日
在アルジェリア日本国大使館

I.アルジェリア治安情勢(昨年までの経緯)

 1. 1991年12月実施総選挙(イスラム原理主義政党FISの勝利)の効力停止後、イスラム過激派テロ多発。1993年イスラム過激派テロリストが外国人標的化を宣言。1997年まで100人以上が犠牲。
  2. 1999年4月ブーテフリカ大統領誕生。同年7月国民和解法施行。テロリスト掃討作戦展開。
  3. 在留邦人は1978年の3234名が最高。1980年代初頭は2000名台。1993年298名より退避により1994年44名。なお、2000年10月72名、2001年6月81名。2002年1月現在101名。
  4. 2000年6月アルジェ県等の危険度を4から3に引き下げ。
  5. 昨年4月カビリでの騒擾発生。同騒擾はテロの脅威との関連性なしとの認識。但しカビリ問題の国内政情への影響には注意すべし。また、失業者及貧困化等社会経済問題による一般犯罪の増大に注意。

II.昨年(2001年)一年間の推移(治安情勢の着実な改善)

 1.テロ犠牲者数は1998年に激減後、低位安定で推移(当地報道による当館調べ)。米国多発テロ以降治安当局による掃討作戦が奏効。断食月(ラマダン)も概は平穏に推移。昨年を通じ治安情勢は大幅に改善というのが当地外交団の共通認識。


  2.テロ事件発生地域の局地化(アルジェ隣接県山岳地帯へ)に伴いアルジェ県内の治安の回復。8月29日アルジェ県内で2年ぶりに手製爆弾爆発により負傷者発生したが、諸外国中最も慎重な仏も外務省のトラベル・アドバイスにて「2年ぶりの爆弾爆発事件も現在の首都アルジェの安全性を再考せしめるに至らない」としており、首都圏の安全性が趨勢として定着しているというのが当地での一致した見方。
昨年一年間に外国人を標的とするテロが再燃する兆候なし(昨年1月のロシア人技術者殺害は彼らの不見識によるもので外国人に対する脅威を示すものではないとみられる)。人里離れた場所での無防備の住民が狙われるなどテロリスト側の能力低下の兆候有り。

3.9月の米国同時多発テロ事件発生及び米英等によるアフガニスタンにおける軍事行動以降、当国におけるテロリストの多くがアフガニスタン滞在経験を有することから、当国に存在する主要国在外公館及び大規模施設は他のイスラム諸国におけると同様、襲撃の標的とされぬよう警戒を高めることが必要とされた。またいずれの主要国も海外渡航情報において海外旅行一般につき新たな注意事項を盛り込む事例はあっても、米国同時多発テロ事件を契機として、当国への渡航をシングルアウトして警戒を呼びかけるものは皆無。
米国同時多発テロ事件により中長期的には、近隣欧州諸国にて国際的テロ組織取締りが強化され、また、アルジェリア市民による治安当局への協力意識の高まりもあり、政府による国民和解政策と掃討作戦強化を合わせた施策が奏効の可能性大。注目された米国多発テロ事件後の断食月(ラマダン)の時期も、従来に比し大幅改善。

III.主要国の対応

 1.自国民への渡航勧告
欧米主要諸国は米国同時多発テロ以降も当国への渡航を制限する何らの措置も導入せず。我が国のみが業務渡航を含む一律の渡航延期勧告を継続してきており、特異な事例。主要国の渡航情報では、観光等用務によらない(non essential)渡航に対して注意事項を掲げ、また、アルジェ以外の北部地域の訪問に観光旅行の自粛を勧告する事例はあっても各国とも例外なく南部地域はアルジェよりも安全との認識、仏も観光旅行を容認。独及び伊の如く南部は促進し得るとの見解。我が国は南部観光地をアルジェ県よりも危険と認識してきており特異。なお、我が国は2000年6月にアルジェ県の危険度を4から3に引き下げたが、業務渡航を含め一律に渡航延期勧告が維持されたため、引き下げの実効薄い。

 2.ビジネス交流増大及びそれに伴う欧米官民の対応
欧米主要国は、昨年前半までの治安情勢の顕著な改善に鑑み、既に二国間交流のための施策を取っていたが、米国同時多発テロ事件以降もビジネス交流増大のための施策を一層すすめ、多くの欧米諸国の大使館で領事や商務担当館員を増員するとともに、アルジェを取り巻くビジネス環境が整いつつある。なお、我が国のみが上記の特異な一律の渡航延期勧告がビジネス交流を阻害することになっており、早急な対応が求められる。
(1)インターナショナル・スクールの開校
  (イ)インターナショナル・スクール・オブ・アルジェ(2001年9月開校済み)
  (ロ)仏語リセ(2002年9月開校予定)
(2)商務担当官の増員
  (イ)墺 商務担当官(1名、2001年9月着任)
  (ロ)伊 商務担当官
  (ハ)独 過去2年間にそれぞれ政務(2名)、文化(1名)
(3)領事業務の増強
  (イ)アンナバの仏領事館再開
  (ロ)オランの仏領事館再開(予定)
  (ハ)米大使館領事再開に伴う担当官の増員
  (ニ)英大使館領事再開に伴う担当官の増員
(4)仏航空会社がアルジェ−パリ間を1日2便就航開始予定
  (Air lib社:旧AOM-Air liberte社、2002年1月より)。
(5)その他
伊文化会館開館済み
独ゲーテインスティテュート開館準備中

 3.公館警備措置
米国同時多発テロ事件発生以降、米英加等在外公館及び大規模行事等の警備には一層の注意を払う。居住、家族同伴及び外出への制限を課すコンパウンド体制をとる国は、82ヶ国公館(内先進国24ヶ国)中5カ国(仏、米、英、加、日)のみ。その他の公館の館員は自由に外出。私有車又は徒歩による普通の通勤(米国同時多発テロ事件以降も継続)。
  (1)厳戒体制の国も緩和措置導入(最近1年間の緩和措置)。
   (イ) 米 8年ぶりに独立記念日レセプション開催
  アルジェリア航空の利用を許可
  館員の私用での外出を制限的ながら許可
   (ロ) 加 昼間の警護官をつけない防弾車での外出を許可
  大使館付近への警護官を伴う徒歩での外出を許可
   (ハ) 仏 アルジェリア航空の利用を許可
  館員の警護官なし運転手付外出を許可
  (2)仏以外のEU諸国は、住居、家族同伴及び外出の制限撤廃並びに本 国派遣警護官を減員乃至は全廃。

IV. 今後わが国のとるべき措置

 米国同時多発テロ事件以降も、既に昨年年央までみられた治安情勢の回復が一層顕著。欧米主要国は既に2年来、米国における同時多発テロ事件発生以降も含め、一貫して人物経済交流に関する施策を推進。我が国のみが業務による渡航につき一律に渡航延期を勧告しており、同渡航情報が民間の経済活動を妨げ二国間交流の主要な阻害要因となっている。我が国として上記の当国の治安改善に鑑み、一刻も早く海外危険情報(危険度)を改定の要有り。同改訂は海外危険情報の数値化された危険度の制度見直しを待たずに実施を要する。