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第1回マグレブ研究会
「アルジェリア問題の再考」実施報告
(2005年3月25日(金) 開催)

去る2005年3月25日、上智大学四谷キャンパス7号館において「マグレブ研究会」が開かれました。
センターのホームページを見て参加した方をはじめ、アルジェリアに関心をお持ちの22名の方が出席され、興味深い講演、報告を聞きました。

渡辺祥子氏 (慶応大学) 「植民地アルジェリアにおける公認イスラーム」
磯 直樹氏 (一橋大学) 「Citizenship と社会学」
福田邦夫氏 (明治大学) 「アルジェリア現地視察報告」
私市正年氏 (上智大学) 「アルジェリア現地視察報告」

以下に、福田先生の現地報告を掲載いたします。



2005年2月20日から3月10日までアルジェとオランに行ってきました。
1999年の11月に行って以来、6年ぶりのアルジェリアでした。旧知のリール大学教授のAbdelkader Djeflat先生にも再会できました。
印象を5項目、お話したいと思います。

(1) 街の印象
まず、最初は街の印象がぐんと明るくなったこと。フランス植民地時代からの優美な建物も残っていますが、なんとなくパッとした感じがしました。

(2) 車事情
そして、空港を出て直ちに車の渋滞に驚きました。アルジェ市内には車が300万から400万台走っていると言われます。‘93年ごろまで、1500cc以上の車は税金が高く、中古車の輸入は禁止されていましたが、中古車は2年以内のものは可能になり、現在は自由化されました。
このところの油化の値上がりのお陰で、‘99年から'04年の間に車の総台数は2.2倍に増えたそうです。
街中には、FIATをはじめ、外国車の展示場が増えたのも印象的でした。
一般向けのローンのシステムも充実し、たとえばCrédit Populaire銀行では価格の70%を立替え、20年月賦を使えるようにしたのですが、きちんと返さないので、銀行側が赤字になっているとも聞きました。

(3) 建設ラッシュ
アルジェ市が広がってきています。
商業センター、中央市場、展示会場など、どんどん建設が進み、ビルラッシュが起こっています。

(4) 人々の生活環境

ブーテフリカ大統領は再選の就任公約で2010年までに住宅を100万戸建設100万人の雇用創出、水問題を解決し、失業者を減らす目標を掲げました。失業者は26%から14.6%に下がったそうです。(目標と言えば、1970年代のはじめ、ブーメディエン大統領は経済発展を遂げた日本をお手本に、1980年をホリゾン=地平線に設定し、改革を進める、と宣言したけれど、地平線はどこまで行っても遠くにあり、追っても追っても遥かかなたにあり続けるという話もあった。)
今回会見した公共事業省のお役人に聞いてみると、「大丈夫!」と、言っていました。
改革の点では、1994年から開始された構造調整政策によって国営企業の解体政策が進められています。金融や公共事業の会社600社あまりが対象になっているのですが、そういった企業の入札を行っても参加するのは外国の会社で、国内企業はいっさいないようです。
建築の分野では、中国人労働者が8万から12万人建設現場働いています。
中華レストランも10軒くらい出来ています。市内の大市場「グラン・マルシェ」に行ってみたら中国人が大勢買い物に来ています。
その反面、30歳以下の若者の80%が失業者という問題も存続しています。地元の土建屋がいないのも原因です。
現在の最低賃金(SMIG)は2万ディナールで約2万6千円くらいですが、中国人労働者は月4〜5千円で雇えるのです。

(5) 交通・産業事情
1964年以降、テュニスとモロッコを繋ぐ高速道路(autoroute)建設事業があり、現在は400kmが完成しているのですが、実際は飛び飛びで出来上がっている状態です。ブ大統領は完成に向けはっぱをかけています。
一方鉄道網はフランス時代と同じで、1400kmに留まっています。水の問題ですが、アルジェリアにある49のダムの内、70%は使用不可能で、残り30%の内5割は水が途中で漏れていると言われています。年間に必要な30億立方メートルを用意するために淡水化事業も日本の伊藤忠などが参入しています。
つい3日前の国民議会でSONATRCHの民営化が決定されました。2012年のEU加盟にむけて、法律を整備し、2013年のWTO加盟がブーテフリカ大統領の悲願です。アメリカのFDIもアルジェリアに注目しており、さらなる貿易の自由化をもとに、南南協力のミーティングポイントになれば良いと考えているようです。
農業の分野でも国有地解体、農地払い下げなどを進め、年率9%の成長を遂げています。特に換金作物の栽培が盛んで、マルセイユの市場では、アルジェリア産のプチトマトやナスが見られるようになりました。
ただ、産業の分野では投資が遅れており以前、日本企業が建てた工場、たとえばMostaganemの繊維工場やセメント工場では設備の老朽化が進み、作動しなくなっているところが多いようで心配です。